県庁に到着するとあいにく駐車場は満車。車椅子を借りたいと申し出ると、守衛さんが議員会館の前にある車椅子マークの付いた駐車場に案内してくれました。車椅子マークの駐車スペース官公庁や公共施設、高速道路のパーキングそして、ちょっと大きなショッピングセンターには増えてきましたよね。
ずいぶん幅広く駐車スペースが取ってあるなと思っていたのですが、県庁が用意してくれた車椅子を車の脇に置いてその理由が解りました。我々が駐車場に車を止めて乗り降りするときには狭さを呪い、隣の車に傷を付けられないよう願いながらも頭とお腹とお尻が出るスペースがあれば何とかなります。しかし車椅子はに乗り移るには扉を大きく開け放し車椅子を横付けするために1m近いスペースが必要なのです。
車を止めた一番近くの議員会館で車椅子をお借りすることになり、守衛さんに案内された階段下へ取りに行くとビニールがかかった新品同様の車椅子が何台か置いてありました。ビニールを取って折り畳んである車椅子を広げるところで守衛さんはモタモタ。こちらは何度か実践で覚えた取り扱い方をご披露すると感心しきり。立派な車椅子が袋をかぶったまま置いてある理由が解ったような気がします。
たたみ方 | ||
足のせを上げる Aさんのは布で出来ている | シートを持ち上げる | アームレフトを持ってたたむ |
ひろげ方 | ||
外側に開く | シートを押し広げる | シートを押し下げる 指を挟まないように |
借りた車椅子にAさん座っていただき、いざ庁内へ。実はこの車椅子が後でとんでもない騒ぎを起こしてくれるのですが、そのようなことを知る由もない私は初めて車椅子を押すことになったのです。Aさんが軽いのか?車椅子が軽く押せるように出来ているのか?平坦なところは全く問題なし。Aさんの微かな香りを感じながら”女性にこんなに接近するのは初めてだなーーー”なんて余計なことを考えながらも、スロープもAさんがこいでくれている事もあって難なくクリアー。
その先工事中で道路が斜めに傾斜しているところにさしかかって初めて手に力が入ってしまいました。まっすぐ進みたいのに斜めになっていく。ついさっきはあんなに軽く感じたAさんが急に重く感じたのです。傾斜に逆らう形で斜めに押していかないとどんどん隅の方に寄っていってしまう。押すのも難しいものです。
庁内へ入ってしまえば、いつもの会社と同じ段差のない廊下にエレベーター。Aさんが自分でこいで行けます。福祉課での用事も無事済ませて部屋を出ようとしたところでAさんの異変に気が付きました。なんと顔が真っ黒。まるで火事場から出てきたようにすすけているのです。私も自分の手を見ると真っ黒。なんと犯人は借りた車椅子。きちんとビニールがかけられた真新しい車椅子でしたが、長いこと使われていなかったのでしょう。車輪も座面も取っ手も、埃で汚れていました。
しっかり管理してくれないと困りますよ県庁さん!もっとも車の後ろに車椅子を積んでいたのだからそれを使えば良かったのだけれど。
その後ポートタワーへ立ち寄ることにしました。
すっかり日も暮れた中、入り口に近い場所で車椅子に乗り換えてもらって私は車を駐車場へ。
Aさんの車椅子を押しながらチケット販売所へ行くと、障害者と介護者は1名は無料と言うことでそのまま中へ入ることが出来ました。
エレベーターが上がり出すとAさんは下が見えるのが怖いらしくて横を向いています。ちょっと意地悪して車椅子を動かすとまた反対方向へ向いてしまう。せっかく綺麗な景色なのに。
最上階へ付くと案内係のお姉さんが「お帰りは1回下へ階段を降りてからボタンを押してお呼びください」とマニュアル通りの解説を。“おいおい、どおやって車椅子で階段を降りるんだい“と言おうと思ったらこちらを見て慌てて「最上階からお呼びください」だって。まったく何処見て解説して居るんだ。と思いながら、展望台へ出ると、とても夜景が綺麗でした。Aさんも怖々と下を見ていますが、暗いから下までは良くは見えない。私はゆっくり車いすを押しながら一緒に見て歩きました。もちろん1人ならきっとポートタワーに立ち寄ろうともしなかっただろうし、たとえ来てもさっさと見て帰ったに違いないのに今日は何故かのんびりした気分です。